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2017年8月15日 (火)

第3章第4話音叉

いただきますなの

いただきます

一日中冷え込んでいる2月の土曜日の昼下がり、くるみちゃんと一緒にくるみちゃんの家の庭にあるサンルームでお茶会を開いていた。くるみちゃんがわざわざ土曜のお茶会のために増築した部屋である。ここからだと冬の寒さを感じないで、外でお茶をしている雰囲気が味わえる。

今日はスポンジケーキとドーナツと紅茶だった。

ミスラェンダーのお茶会?

そうなの。詩音ちゃんさすがなの。赤毛のアンなの

赤毛のアンの第二巻アンの青春の中に出てくるロマンティックでちょっと変わり者のミスラェンダーがアンにお茶をすすめるシーンに出てくるお菓子である。

くるみちゃんに借りた本の中にあったから。やっぱり、アンシリーズはアンの青春が一番よね

わたしもアンの青春は好き。特にミスラェンダーは好きなの

うん、アンの青春はミスラェンダーの物語みたいなものだからね

くるみちゃんもミスラェンダーも変わり者同士だからねとは口には出さない。それがマナーってものよ。

でも、赤毛のアンならともかく、難しいアンの青春なんてよく読めるの。詩音ちゃんすごいかも

ベクトル空間に持ち込んじゃった。あそこなら時間はたっぷりあるから

ベクトル空間では通常の時間は流れない。そのかわりベクトル空間の時間が流れる。そのため、年を取ることなく悠久の時間が流れていく空間である。

一度あそこに呼ばれちゃうと長いときは2週間とか一月とか帰ってこれないからひま。まるでミスラェンダーがこだま荘で隠遁生活してるみたいになっちゃう

突然呼ばれて、帰る時間は不明確。とっても困るの。あそこに自由に行きたいときに行けて帰りたいときにかえることできたらどんなに便利でしょう

くるみちゃんとわたしがここ数月悩んでいるところに結局話題は行き着いた。しかし、打開策も考えられず悶としている。

早く何とかしないとちょっと焦っていってしまった。

草薙先生が舞ちゃんを助け、草薙先生の代わりに番井先生が死んだことにより、対世界のバランスが崩れ始めてるの

わたしはベクトル空間にノートをおいて舞ちゃんとの連絡帳代わりに使っている。その結果、和恵ママと番井先生が向こうにはいないことを知って、その影響が出始めていることが気になっている。

早く向こうに介入して、バランスを元に戻さないとベクトル空間がバランスを崩して崩壊する

うん、でも、スランプなの

ごめんなさい。あせらせちゃったね。でも、それが普通よね。そんなにポンポン真理を発見したら毎年ノーベル賞もらわないと間に合わないよ

そうかも。でも、こんなときは気分転換が必要なの

気分転換?

うん。詩音ちゃんにピアノ聞かせてあげるの
くるみちゃんはサンルームの中にある電子ピアノに向かおうとした。真っ青になるわたし。

え?ミスラェンダーのお茶会にはピアノは出てこないよ。妖精の角笛だよ。

必死に話題をそらそうとした。お世辞にもくるみちゃんのピアノは上手とはいえない。そのくせ人に聞かせるのが好きだ。いわゆる下手の横好きである。ジャイアンのカラオケと一緒である。

うちには妖精の角笛はないの。かわりにピアノがあるの。詩音ちゃん、ピアノ聞いて欲しいの

言葉は穏やかだが、有無を言わせぬ迫力で迫る。

パパとか和恵ママとか呼んで犠牲者を増やそうと考えたけど、もう間に合わない。

そうだ、くるみちゃん、ピアノじゃなくてバイオリン弾いて。

天は二物を与えない。くるみちゃんはピアノだけでなく楽器全体が苦手。だけど、しょうがない。まだ、両親の影響を受けましなほうのバイオリンをリクエストした。

わかったの。今日はバイオリンにする。

くるみちゃんがニコニコしながらバイオリンを取りに行った。それをドキドキしながら待ちつづける。

処刑の場にひかれていく人の気持ちが、今やっとわかったわ。
ぼそっと、独り言を言う。

くるみちゃんが戻ってきた。バイオリンケース以外に何か持ってきた。金属でできたの字になっている棒だった。

くるみちゃん、何もってきたの?

音叉なの

音叉?

うん、この頃バイオリン弾いてないから調律しないといけないの。長いこと弾いていないと音がずれるから、時音あわせをするの。それがこの道具

くるみちゃんは音叉を叩いて鳴らしてみる。
コーン
小さな音がかすかに聞こえる。

音小さくてこれじゃ聞こえない

くるみちゃんがわたしの頭の上に音叉を乗せる。まるで頭の中で鳴っているように聞こえる。

頭の上とか口にくわえて使うの

なんか不便。もっと普通にしてて音大きくならないの?

??う〜ん。ちょっと待ってて

くるみちゃんは2階に行ってがさがさ何かを探している。
しばらくして木の箱みたいなものを持ってきた。

あったの

くるみちゃんは木の箱をおいて、再び音叉を鳴らす。そして木の箱の上に音叉を差し込む。今度は木の箱から大きな音が聞こえ出す。

大きな音が出てる?!

共鳴箱というの

共鳴箱?

うん、共鳴箱。この音叉とこの箱が共鳴して大きな音がでるの。共鳴すると小さなエネルギーでも大きなエネルギーになることができるの

へ〜

お風呂で身体を小さく前後に揺らしたりするとそのうちお風呂の水があふれたりするのと同じ

ああ、知ってる。大きな橋が風に吹かれて突然壊れたりするのと一緒でしょ。この前テレビでやってた

詩音ちゃん。すごいの。頭いいの

へへ
照れくさて頭をかいた。

共鳴はその物体が持っている固有振動数が一致するとおきるの。固有振動数はその名のとおりその物体が持っている特定の振動なの

固有振動数?

うん。式で書くとこうなるの

くるみちゃんは固有振動数の式を詩音に書いて見せた。

この振動数が一致すれば共鳴が起きて小さなエネルギーでも大きな力が発生するの

わたしはその式をじ〜っと見つめていた。そして、とんでもないことに気付いた。
共鳴させられれば小さなエネルギーで大きな力を出せるああ!わかった!

詩音ちゃん???

ベクトル空間への行き方!

え?

共鳴させればいいんだ!そうすれば240GeVものエネルギーがなくてもいい。それにこの式間違っている!だって、軸方向の時間の記述がない!

二人で顔を見合わせた。

この世界での時間軸で共鳴が起きるように、軸方向の時間も共鳴が起きるはず。だから、軸の固有振動数がわかれば共鳴させることができる

詩音ちゃんがベクトル空間に行けるのは、きっとベクトル空間の門の固有振動数と詩音ちゃんの固有振動数が一致して共鳴しているから。だけど、好きなようにいけないのはまだ共鳴がたらないから

音叉をわたしの頭の上で共鳴させるのでなく、共鳴箱のようなものを使って共鳴させればもっと大きなエネルギーがだせる!

そうやって、軸方向の時間で共鳴させれば、向こう側のエネルギーがどんどん溜まってとほうもないエネルギーになる。しかも、それにかかる時間は軸の時間だから、この現実世界ではほんの一瞬でしかない。だから、好きな時に自由に出入りができるの

ブレイクスルーした!

うん、うん

そうするとガウス平面状での固有振動数はこうゆうふうに表されるから、これを軸上にフーリエ展開するとこうなる。

私はフーリエ展開した式を見せる。それをくるみちゃんが少し手直しする。

できた。これでいける

すごいすごい。これって固有時間振動数って名づけない?

うん、賛成なの。

後は、その人の固有時間振動数をフーリエ展開でスペクトラム分析すれば誰でもいけることができる。

うん。でももう一つ問題があるの。この共鳴箱と一緒で共鳴させるに適した材質があるはず。それを使って共鳴させないとうまくいかないの

適した材質?

うん。触媒みたいなものなの。多分この世にありふれているもの。そしてなんでこれが?って言う感じのものだと思うの

つまり、触媒となる材質とその人の固有時間振動数を見つける方法を探し出せばいいのね

簡単に言うけど大変なの

うん、でも、今まで比べればすごい進歩した。なんかワクワクしてきた

もうお茶会もバイオリン演奏もそっちのけでくるみちゃんとわたしはくるみの第三定理(Shionstheory)を作り上げていった。

これで舞ちゃんに会える!

つづく

LMモンゴメリー著掛川恭子訳のアンの青春講談社からの引用

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